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2011年3月31日
一足早めの花見
意図せず入手してしまった古いフィルムカメラ「ZEISS IKON Icarex 35 CS TM」。一眼レフカメラではありつつも、ピントも露出もフルマニュアル、電池など必要としない完全機械仕掛けのカメラは不便ではありつつも、写真を撮る楽しさみたいなものを再認識させてくれる存在でした。
フィルムカメラといえば当然のことながらフィルムを必要とするわけです。デジタルカメラで言えばCCDやCMOSなどのセンサーにあたる部分です。デジタル一眼レフカメラはセンサーがカメラに据付られているので、ある意味ではセンサーの特性は固定化されており、カメラの機種ごとにセンサー独自の味みたいなものがあり、写りにもその差が現れてきます。
一方のフィルムカメラの場合はデジタルカメラで言うところのセンサーがフィルムそのものであるため、フィルムを入れ替えることで写りそのもののクオリティを変えることができます。色の作り方、写真そのもののザラザラ感、ツブツブ感の違いなどは、まさにフィルムそのものの特性により生まれる「差」であったりします。
昔からフィルムカメラを一度は使ってみたかったという話を昨日のエントリで書きましたが、より具体的に言うと「フィルムカメラを使いたい」というよりもむしろ「いろんなフィルムを使ってみたい」という思いの方が強かったりします。
本やウェブで「フィルム」で撮ったという写真を見る機会があり、併記されている文章でフィルムそのもののクオリティに言及している記述を目にすることがよくあります。あのフィルムは発色傾向がいい、このフィルムはあっさりしている、などなど。そういう記述を見ると実際に自分でいろんなフィルムを使ってその差を見極めてみたくなります。
富士フイルムの「ベルビア」とか「プロビア」とか、そういうフィルムの名前や傾向などの記述を目にするだけで「自分が使ってみたらいつもの光景はどんなふうに撮れるんだろう?」と夢が広がってきます。というようにフィルムについては文章として読むばかりで実際に使うことがないので、例えば「ベルビアって発色が素晴らしいみたいね」というように、実践の伴わない知識ばかり増えている状態でした。
一方で実際にフィルムを使うとなると、当然のことながらフィルムカメラが必要になるわけです。フィルムカメラを使うということは「フィルム代」から「現像代」などのコスト負担を覚悟しなければなりません。さらに僕の場合は撮影した写真をflickrにアップしたりこのブログに掲載したりと、ウェブでの展開をメインにしているため、フィルムで撮影した写真のデジタイズという工程は避けて通れません。
フィルムのデジタイズにはスキャナの利用、もしくは現像屋さんでやってる「CD-R書き込みサービス」みたいなものを使うしかありません。フィルムをそのままカメラで撮影する「再撮」という手もあるのですが、極めてめんどくさいので現実的ではありません。となると、多かれ少なかれデジタイズにも費用がかかってくるわけです。
入手したZEISS IKON Icarex 35を持ち出してトライアルとして何度か撮影に使ってみました。その結果、やっぱりデジタルカメラとは違うテイストを感じることができたので、いよいよ本格的にフィルムで写真撮影を始めてみようと考えるようになりました。
デジタルによる写真撮影のよさは、一度機材を揃えてしまえばランニングコストが極めて低くおさえられる点にあります。僕自身もその恩恵を享受していたのですが、せっかくフィルムカメラが手に入ったので、この機にフィルムにまつわるランニングコストを「払う!」と腹をくくることにしました。
決意が覚めやらぬうちに、早々にスキャナ、ライトボックス、ルーペの3点をヤフオクで落札。現像後のプロセスを自宅で行える機材をとりあえず揃えてみました。中古型落ちで値段が激しく落ちているものをうまいことゲットしました。と同時にフィルムカメラを使うからにはフィルムが必要。やっぱりベタに「カラーリバーサルフィルム」を使ってみたいわけです。ヨドバシカメラ新宿西口本店のフィルムプリント館のフィルム販売コーナーを訪れ、とりあえず富士フイルムの「プロビア100F」「アスティア100F」「ベルビア100」「ベルビア50」を購入。とにもかくにも使ってみないとフィルムごとの写りの違いなんてわからないので、まずはいろいろ使いまくってみることにしました。
ということで撮影してみたのが今日、昨日、一昨日の写真です。一昨日の豪徳寺の墓地はプロビア100F、昨日の桜はベルビア50、今日のお花見写真はベルビア100で撮影したものです。
噂では「ベルビアは赤系統が強く出る」と聞いていましたが、ホントに赤系統が鮮明に出ていてビックリしました。一見すると「カラーバランスが赤にころんでる」「赤かぶりしてる」と見えますが、それはそれでフィルムの味だろうと思うので、修正ゼロでそのままアップしてみました。
この写真は数日前にアップした多摩川河川敷の構図と似ていますが、桜そのものは前回の写真に写っているものの近くに生えてる別のものです。日本人は花見が好きな人種。東京都内のソメイヨシノが開花してないこの日、この場所の桜が咲いていることを見越してゴザを持ち込み、ささやかな感じの花見を繰り広げていました。
花見とはいえ、酒を飲んでいるわけでもなく、ゴザを敷いてペットボトルの飲み物を飲み、お菓子をつまみながら桜の花を見上げていました。「花見会場で桜の花を見ている人はほとんどいない」とよく言われるものですが、この人たちはけっこう長い間、じっくりと桜の花を見続けていて、本当の意味での「花見」を堪能しているようでした。
アップロード日時 : 2011年3月31日 00:03 撮影場所 : [ 世田谷区 ]
地図
撮影詳細情報
撮影情報 | |
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撮影場所 | 多摩川河川敷 多摩川遊園 |
撮影日時 | 2011年3月26日 15:11 |
カメラ情報 | |
カメラ | ZEISS IKON Icarex 35 CS TM |
フィルム | FUJICHROME Velvia 100 |
フォーマットサイズ | 35mm |
ISO感度 | 100 |
露出時間 | 1/250秒 |
レンズ情報 | |
レンズ | Pentor 35mm F2.8 |
焦点距離 | 35mm |
絞り | f/11 |
コメント
こんにちは(^^)
カメラの仕組みなど、知らないことばかりでしたが、専門的な話に触れられて勉強になっております(^^)♪
私は写真のことはほとんど何も知らないのですが、
なんというか、写真を観るとすごく人間味があるような感じがします。
投稿者 okiyo : 2011年3月31日 13:26
>okiyoさん
普段は写真の中身のことしか考えてないのですが、ここ最近、カメラなど機材のラインナップに大きな変化があったので、撮影道具まとめてガッツリ文章にしてみました。ちょっとマニアックな話が続いててすみません。
投稿者 コーヒー : 2011年3月31日 22:00
こんにちは。ご無沙汰しております。
ベルビア,懐かしいです。
といっても,だいぶ昔にほんの少しかじった程度だったので
すっかりどんなフィルムだったか忘れていました…。
興味深く読ませて頂きました!
それにしてもきれいな桜ですね…。
投稿者 yk : 2011年4月 2日 11:03
>ykさん
ごぶさたしております!フィルムの世界は始めてのチャレンジなので、いろんなフィルムを使ってその傾向を見ていくだけでもすごく楽しいです。今はベルビアをメインで使ってますが、今後少しずつプロビアだったりアスティアだったり、はたまたコダックのフィルムあたりにも手を伸ばして自分に合ったフィルムを探してみたいと思っています。
投稿者 コーヒー : 2011年4月 2日 19:39