恐怖の池袋物語-第3夜-

いろいろ調べてみると、どうやらクルマエビは普段、砂の下に隠れていて、エサになりそうなものがやってきたらパッと姿を現してエサをゲットするらしいのです。ということで、まずはこの様子を撮影したいということになりました。築地に行き、クルマエビをゲットしてきました。そして水槽と熱帯魚飼育用の細かい砂を用意して実験の準備を整えます。これらのセットはスタッフルームの中に組み、カメラをセットしてクルマエビの様子を狙います。ところが、エビがなかなか砂に潜ってくれないのです。どうにもこうにもうまくいかず、いろんな方に相談してみると、どうやらクルマエビはけっこう繊細な生き物で、環境がうまく整ってないと普段通りの生活をしてくれないそうなのです。僕らみたいな素人がちょっと何かやったぐらいで、普段の生活は見せてくれないということのようです。そこで目をつけたのが水族館でした。

サンシャイン水族館に連絡し、かくかような実験をやりたいので協力してほしいとムリヤリ頼み込んだのです。するとうまい具合に快くOKしてくれました。さっそく訪れてみると、水族館のバック通路のところに実験用の巨大な水槽を一つ用意してくれ、そこに自然の状態に近い砂と海水を入れて待っていてくれてました。僕らみたいな素人では、これだけのセットを用意するのはすごく大変なので、かなり助かりました。特に大変なのは海水なのです。僕は築地でエビを買ったとき、一緒に海水を大量にもらってきていたのですが、どうしても水の鮮度が落ちてしまって、衛生状態が悪くなってしまうのです。しかしさすがに水族館は違いました。なにやら海水専用の蛇口があり、そこからいくらでも海水が出てくるのです。池袋の街中でどうやって海水をゲットしているのか不思議だったので聞いてみたら、どうやら海水専用の巨大なタンクを用意していて、どこぞやから海水を買って毎日補充しているとのことなのです。世の中何が商売になるかわらかないものです。海水一つでも商売になるというのがビックリしました。でも確かに水族館にとってみたら海水ってのは商売道具の一つですからね。そんじょそこらの東京湾や相模湾あたりの適当な海水を持ってくるだけではダメなんでしょうね。さらに重要なのは温度管理。そもそもエビは海水温の低い場所に生息するらしく、飼育するには比較的水温を低く保ってなければダメなんだそうです。スタッフルームでは常に照明をあてていたので、必然的に水温が上がってしまって、エビが弱ってしまったようです。でもさすがに水族館だと何やら不思議な機械で水温を一定に管理してくれていました。

さて、これだけお膳立てしてもらえばあとは撮影するだけ。カメラを水槽の前にセットして、いざエビを投入。さてさて、うまく砂に潜ってくれるかな？と思い見ていると...全く潜ってくれません。これだけ完全な管理がほどこされているのに、潜ってくれる気配すらありません。

水槽の前でカメラを構えたのが22:00ごろ。そこから翌朝まで粘ってみたのですが、全く潜ってくれません。一度仕切り直すためにスタッフルームに戻り、準備を整えて再び水族館に行ってみました。するとエビは砂の中に隠れていたのです。でも、潜る瞬間の映像が必要なのです。せっかく潜ってくれたエビを砂の上に引き上げ、再び潜る瞬間を狙います。しかし、なぜか一向に潜ってくれる気配がありません。水族館の人によると、どうやら人の気配を感じて緊張しているのではないかということでした。そこで、身を隠すものを用意するため、再びスタッフルームに戻りました。そしてあらためて水槽の前に戻ってみると、また今度もエビは砂の中に潜っていました。僕がいないところで潜られても全く意味がないので、あらためてエビを砂の上に出し、カメラを構えます。僕はバカでかい黒布をかぶり、気配を消します。しかし！そこまでしてもヤツは砂に潜ってくれません。翌朝になっても事態は一向に好転する気配すら見えませんでした。

結局最終的には何とか砂に潜る様子を撮影できましたが、かなりしんどい撮影でした。エビの水槽を前に身動きひとつできず、ずーっと待ち続けてなければならないわけですからね。しかも2日間も徹夜ですよ。生き物相手の撮影というのは自分の思い通りにならないのでかなり難しいものがあります。